生い立ち

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約束を破られたことに納得できるはずもなく、ゆりは親と喧嘩した状態のまま県外の専門学校へ入学した。 ゆりは、親から認められたことがなかった。子どもの頃も百点を取っても当たり前で、褒めてもらった記憶などない。そして18歳になったゆりの中でも、その欠乏が満たされることはなかった。ゆりは何でもいいから誰かに認められたかった。愛されたかった。絶対的な何かが欲しかったのだ。 ゆりは仕方なく寮に入った。寮では友人もできたが、点呼に門限などがあり、耐えられないほどストレスを感じた。 ある日、仲良くなった友人達と話している時、男子の話になった。ガールズトークというやつだ。その話の流れで、ゆりは友人が紹介してきた他学科の男の子と連絡を取り合う事になった。 ゆりは、乗り気ではなかった。そもそも家族から逃げるためだけに県外の学校に来たのであって、友人を作る気も、彼氏を作る気も、さらさら無かったのだ。友人の紹介という事もあり、連絡はちゃんと取った。夜は寮でその話で持ち切りだった。それはそれでゆりも楽しんでいた。 ある日その連絡相手の顔を見た。新入学生のオリエンテーションで学校内案内があった。その時にすれ違ったのだ。相手は全く気付いていなかった。特にタイプではなかった。しかしメールは続けていた。今更だが、ゆりはとても寂しがり屋だ。どこにも自分の居場所はないと、幼少期から思って生きてきた。小2の頃には毎日毎日「死にたい」と思っていた。家族の中に自分の居場所がないのだ。毎日“なんで生まれてきたのだろう。生まれてこなきゃよかった”と思っていた。そして、三途の川というところへ行った。その夜の事だけはどうしても忘れられない。
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