生い立ち

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「別れよう」 『それいいね!』 ユウトは冗談だと思っているのか、冗談っぽく話している。 「本気で言ってるのに。ちゃんと考えてよ」 そんな会話をしてから、数日が経ったある日、ユウトから『別れようか』と言われた。『冗談っぽく返してたけど、実はあれから真剣に考えてたんだ。このまま付き合い続けても、お前はまた半年もすれば“淋しい”って言い出すと思う。だから別れよう』 大きく開いた心の穴はなかなか埋まらなかった。自分の存在価値がを失くしてしまったのだ。 気が付くとゆりは、包丁を手にしていた。 ユウトとは何もかもが初めてで新鮮だった。 嬉しくて泣いたのも、悲しくて泣いたのも、初めてだった。ユウトと出逢って初めて、ゆりは自分が“生きている”ことを感じられた。でも、そのユウトを失ったのだ ???。 ゆりは、包丁を手首に押し付け、何度も何度も切りつけた。しかし、ただ血が出るだけだった。あとに残るのは、後から押し寄せる痛みだけ。包丁を手から放したのは、痛みを感じ始めてからだ。自分が包丁を持っていることに驚いた。初めて失恋して食欲を失くした。それから食費は全部お酒大に消えた。冷蔵庫の中にはお酒しかない。そんな日々が数ヵ月続いた。学校に行く気にもなれなかった。
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