小さな雛鳥と迷い猫

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******  不確かな夢を視ていたユウは、身動ぎしながら、ゆっくりと覚醒を果たした。  重度の低血圧の頭を起こして、ぼうっとしたまま、時計を見る。  蛍光式の時計は、お昼過ぎを示していた。  目元をごしごしと手で拭いて、緩慢な動作で、ベッドから降りた。  任務から帰って来てから、もう三日も経過している。  当分任務は無いみたいだし。予定も何もない。  今日はどう過ごそうか・・・。  淹れたばかりの珈琲を啜り、テレビのニュースを眺めながら、思考に耽っていた。  その時。二階から電話の呼び出し音が、耳に入った。  残りの珈琲を一気に飲み干したユウは、速い足取りで階段へ昇り、始終カーテンを閉めっぱなしにしている自室へ戻って、ベッドの脇に置いていた電話機を取った。 「はい・・・」 ≪・・・私だ≫  受話器の向こうから返って来たのは、ユウの師匠たる女性の声だ。元より、この回線は仕事専用であり、かかってくるのは一人しか無い。  だが、ついこの間任務を終わらせたばかりで、当分依頼は無いというのは、直接本人の口から聞いていた筈なのだが・・・。 「任務か?当分は無い筈じゃなかったのかよ?」 ≪急な依頼が入って来てな・・・それが、ナペレからお前に、直接話があるそうだ≫ 「ナペレが?ということは、『評議会』関係か?」 ≪いや。どうやら、個人的な依頼だそうだ≫ 「何?」 ≪今回は少し込み入った事情があってな。極秘扱いとされている・・・直接城にとのことだ≫ 「ああ」 ≪これから会うのは、私にとっても親交深い相手だ。よろしくな≫  じゃあ、と言って、そのまま一方的に切られてしまった。  受話器を置いたユウは、何やら予感めいたものを感じて仕方なかったが、出ることにした。  黒いタンクトップに、同色の短パン。ジャケットを羽織って、腰にベルトを巻いて固定する。黒のハイソックスを履いて、左右の大腿部にホルスターを巻き、右には武器である黒の装飾銃・・・・・・“DETH・SIZE”と、銃身に書かれた『能力』の具現を収納し、反対には、それに全くそっくりの形をした偽造品を収納した。  それらの上から黒のローブを纏って、フードを深くする。最後に、黒のハイブーツを履くのだが、その前に廊下に設置していた電話機で、ノガードへ連絡を入れる。
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