とある名家の兄弟達

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 伯母は相変わらず、夕食に姿を現さない。今日もまた、ベッドに臥していることだろう。  兄上が・・・一番、滑稽だ。父上が相手にしていないことは、僕の目から見ても明確なのに、顔色を読まず、ひたすら意味の無い会話を続けている。一方的に、饒舌で偉そうな内容だ。中身も薄い、どうでも良い話題ばかりだ。父上がつまらなそうな顔をしていることに、どうして気付かない?この恥知らずめ。  父上が少しでも相槌を打つと、兄上は調子に乗って、更に一方的になる。そして、所々で、僕に向かってしたり顔をしてくる。  お前には解らないだろう?  馬鹿にしてくる兄上の顔を、何度、フォークとナイフでぐちゃぐちゃに引き裂いてやろうかと思ったことか。  一番の敵は、ウィリアム兄上だった。  今日もまた、父上は誰よりも先に食事を終えて、書簡に戻って行った。  父上が席を立つと、後妻殿も逃げるように席を立ち、その後を弟も追って行った。本当に、金魚の糞だ。  結局、兄上と二人だけになってしまって、メインである牛のレアにナイフを入れて、兄上の存在を無視しながら、食事を進めていた。  隣接する席で、兄上もまた、僕と同じように、ほとんど冷め切った牛にナイフを入れていた。 「・・・爺や。伯母上はまだ寝込んでいるのか?」 「ええ。本日は、朝から眠気が覚めないご様子で、ご昼食を召された後から、ずっとお眠りになっております」 「アフタヌーンティーも取らずにか?」 「左様でございます」 「そうか・・・それは、心配だな」  伯母に対して、そこまで関心が無い癖して、よくもいけしゃあしゃあと。  どうせ、兄上は伯母ではなく、伯母に付き添っている、父の従兄弟の方にあるんだろう。  同じオールドセイル家の血を汲む、末端でありながら、特殊私兵団『銀狼』の頭であり、歴代最強の実力者たる人の支持を、得たいだけだ。  くだらない。  くだらない。くだらなすぎる。  デザートも来ないまま、早々と夕食の席を立った。 「ヴィンセント」  出て行こうとすると、珍しく兄上の方から声が掛かって来た。  背中で隠しながら、小さく舌打ちしてやった。 「・・・何でございましょうか?」  兄上なんて呼びたくなくて、早く帰りたい気持ちで、兄に向いた。
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