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兄は、にやにやと、格下だと見くびるようないやらしい目つきで、向いて来た。
「・・・爺やに聞いたんだが、この前の、フェンシング大会のジュニア戦で、見事に優勝を果たしたようだな・・・兄として、誇り高いことこの上ない」
・・・・・・よくも。
よくも、そんなことを軽々と・・・・・・本当はそう思っていない癖して。
にやにやと馬鹿にするような笑み。今すぐにでも、剣を抜いて、口から刺してやりたいのを堪えて、拳を握り込んだ。
腹立たしくて、言葉も出せない僕を、兄上はにたりと笑っていた。
「お前もそろそろ、ジャックから訓練を受けたらどうだ?もう十四だろう?ジャックは五つの頃から、もう『銀狼』の一員になるべく、厳しい訓練を始めたと聞いたぞ」
「・・・・・・お言葉ですが、『銀狼』は当主による選抜からなり得るもの。兄上にはまだ、そのような権限は無い筈ですよ?」
偉そうに。
父上から正式に、後継としての権利を譲り受けていないことなんて、こっちは知っているんだ。
長男であることに驕って、いやらしい、傲慢な、偏見の塊。
お前なんて、父上に捨てられてしまえばいいんだ。
心の中で罵倒してやると、兄上は片方の眉を上げて、言ってきた。
「それはどうかな」
小皺ができるほど口角を吊り上げて、グラスの水を一杯含んで、兄上は身体を椅子に凭れるように倒した。
「今晩、僕は父上に呼ばれているんだ・・・これが、どういうことか、解るか?」
ほくそ笑む兄の顔に、かっと熱くなりかけた。
無視して食堂から出た後に、向こうから兄の高笑いが、廊下に響いた。
我慢していた感情が爆発して、衝動に任せて、壁を叩いた。
何度も!何度も!何度も!何度もたたいても、怒りが収まらなかった。
くそ!!くそ!! くそ!! くそ!! くそ!! くそ!! くそ!! くそ!! くそ!!
あの汚物が。偉そうに!!お前なんか、ただ一年先に生まれただけの癖して!!なんの才能もないじゃないか!!
怒りで全身が火のように熱い。ああ、今この手に剣があったのなら、今すぐにでも引き返して、あの憎たらしい顔を何度だって切り刻んでやるのに!!
ワゴンの音と、人が来る気配がする。
こんな浅ましい姿を見られたくない。
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