小さな雛鳥と迷い猫

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******  王都の中心に、王が住まう城がある。その城の名を、キングズロード城と呼んでいる。  そこは王だけじゃなく、城を護る精鋭、近衛隊。また、全国の治安を守る警察部隊、治安維持部隊の総本部がある。  そして、独立機関『評議会』、と、国家機密ランクの集会場等もあり、多重に守られた状態だ。  城門の警備隊に黒いカードを提示して、城の中へと入ることが出来たユウは、堂々と真ん中を歩いた。  無意識に発せられる『氣気』、もしくは畏怖を交えた空気を察してか、道行く国家部隊と官僚達は、自分を見るなりさっと脇目に退いて、道を作った。 「来た・・・」 「今度は一体何の用だ・・・」 「恐ろしい『氣気』だ・・・子供とは思えん・・・」 「評議会長のお気に入りらしいが、一体どんな汚い手を使ったんだか・・・」  ひそひそと声を抑えているつもりだろう。しかし、どの声も、ユウの耳にきちんと入ってきている。  集中してくるのは、畏怖混じりの異物を見るような邪見の視線・・・心地いいものではないのは確かだ。  この城の出入りが許されるようになった初めの頃は、腹を立てたものだが、三年過ぎればなんとやらだ。  気慣れした様子で、受け流していたユウであったが、その態度が気に入らないとばかりに、眼前に巨躯を誇る、歴戦の傭兵が立ちはだかった。 「よう、クソガキ。俺の顔を覚えているか?」 「・・・・・・」  進路を邪魔する巨大な岩のように太刀塞ぐその男を、ユウはフードの下で、平然とした様子で見上げた。 「てめえには、三年前の『カーニバル』で世話になったからなあ。あん時のツケを返しに来たぜ。さっさと武器を抜きな」  顔面に幾多の傷を残し、雰囲気だけでもかなりの強者であることが一目瞭然な大男に、一触即発の気配を感じた野次馬が集り出した。  が。ユウはフードの下で、またか。と嘆息した。 「どうせあの時もまぐれか何かに決まってらあ。じゃねえと、てめえのようなチビのガキがSSSランクなんちゃあ、絶対にあり得ねえ。ここで化けの皮を剥がしてやろうか、ああん!?」  得物である巨大なこん棒を見せ散らかしながら、脅迫する傭兵であったが、ユウの反応が無に近いと理解して、頭に血を昇らせた。 「ほ~、格下は相手にしねえと?『七帝神』様はやっぱり違うねえ」 「・・・・・・正真正銘そうだろうが。格下」
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