とある名家の兄弟達

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 力技で押し出して、手元に向かって突いた。私の攻めを軽やかに避ける弟に、攻めに転ずる隙を与えない様に、連続して怒涛に攻めた。  私達男子の、この時期は、年齢が物を言う。一つ違いとは言え、毎日鍛えて先に身体を作っている私に、ヴィンセントが腕力で叶う筈が無い。向こうも同じことを考えていることだろう。だから、私が抜く前に先に攻めに来る戦略だったに違いない。  言っただろう。お前のことなど、何でもわかると。  自分でもにやけたのが自覚できた。防戦一方のヴィンセントの表情には、余裕が無い。  愚かな。正々堂々と戦おうとしたのが、お前の敗因だ!!  貰った!!  大きく薙いでから、ヴィンセントを無防備にさせて、何の防具も嵌めていないその心臓に向かって、一突き突こうとした。  だが。それまで奥歯を噛み締めていた口が、にやりと笑った。  私の突きは、異常たる反射神経による防御によって防がれた。  思わず舌打ちを打ってしまったが、次に、強烈な一撃が剣に直接伝わった。  勢いに負けて、後退を余儀なくされてしまった。次に、剣を握る手が僅かに痙攣しているのを確かめた。  ああ、なんてことだ。目測を誤っていたのは、私の方だったのだ! 「何を驚いているのです?私はもう、貴方の後に引っ付いて回るだけの可愛い弟ではありませんよ。兄上」  ふふん。と、鼻で嗤うその顔に、胸が急速に燃え上がった。 「ヴィンセント────────────────っ!!」  いつの間にか私は叫んでいて、感情が昂るままに、剣を振るっていた。  ヴィンセントも同様だった。私達は、感情というエネルギーによって、出し切ることのできない爆発的な力を発揮していた。それが、本来あるべき実力差の定義を、覆してしまったのだ。  何合も。何合も。私達は剣をぶつけ合った。渾身の力で、振るい続けた。  肉体の疲労は感じず。ただ、交感神経も副交感神経も麻痺して、アドレナリンが過剰に分泌している状態だ。脳が抑制していた潜在能力が、憎悪によって引き出された。  私は、一片の隙間もなく、ただヴィンセントだけに集中していた。殺すという、明確な殺意によって、身体を突き動かしていたのだ。  限界など、もう当の昔に超えている。身体に、顔に、腕に傷が走り、血が地面に滴り落ちるが、痛みも麻痺も何も感じない。
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