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そこでようやく、ユウは喋った。
が、まだ子供の域を超えていない声に、傭兵は顔を真っ赤にさせた。
「・・・・・・上等だ。上等だ上等だ上等だ!!ぶっ殺してやる!!」
血管を破裂させて、今まで何人もの敵を一撃で粉砕してみせたこん棒を振るい、目にも止まらない速さでユウへと穿つ。
だが。
「────まあまあ、待ちなさいって」
「────そうそう。若いのにそうかっかせんことだぞ」
両肩に手を置かれて、随分とのんびりとした声が二つ、割り込んだ。
「ああ!?」
ぐるりと、顔を旋回した次に、背後を取っていた二つの影を見るなり、傭兵はさっと青くなった。
「その子供に用があるなら、私達が聞くが?」
「何でも言ってみなさい。ほら」
打って変わって、朗らかな笑顔を向ける青年期前の声に、傭兵は全身をぶるぶると震わせると、悪態をつきながらその場から一目散に逃げだして行った。
「おやあ。行ってしまったな、兄者」
「何だったんだろうな」
突然割り込んできて、手を出すことも無く撃退したその二人へと、ユウは鋭い眼光を向けた。
「何の用だ、『双龍』?」
鋭い声音で問いかけたのは、ユウと同じく、SSSランクである二人である。
片方は大体十六歳ぐらいの外見で、癖の入った長い髪を流しており、色は深緑である。身に纏うのは中華服で、背丈も体格も年齢相応であるが、纏う雰囲気が年齢に不釣り合いに腰が据わったものであり、老成された空気が含まれている。ぱっちりとした目は水のような青色だ。
もう片方は同じぐらいの年齢で、片方よりも頭一つ分に大きい。こちらは癖のない漆黒の髪を短く切っていて、隣と比べて鋭い雰囲気がある。こちらもまた中華服を纏っていて、似たような言葉使いだ。あまり似ていない相貌であるが、切れ長の瞳だけ同じ色である。
彼らは、ユウと同じく『七帝神』に数えられる者達で、前者が兄で、後者が弟の、有名な傭兵兄弟だ。ユウはまだ彼らの本名を知らないため、それぞれを異名で呼んでいる。
『龍槌の風神』と、『雷光の竜王』と。
誰もが畏怖して言葉をかけることも憚られるユウに対して、同じ『七帝神』である兄弟は、親密を込めて近寄った。
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