とある名家の兄弟達

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******  やった!!やったんだ!!兄を殺すことができた!!  ざまあみろ、ウィリアム・オールドセイル!!弟に惨敗して、いい気味だ!!お前の後世は、これからもずっと、語り継いでやろう!!子々孫々までな!!  地面の上に倒れた兄の姿に、更に興奮が昂った。 「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」  笑い声を上げながら、僕は走っていた。  元来た道を引き返し、長い階段を風のように駆け上がった。  夕食の後のことだった。  兄と決闘することを決意した僕は、書簡にいた父に、そのまま思いの丈を話した。  確か、その時の台詞は、こうだった気がする。 ────父上。今からでも、思い直してください。ウィリアム・オールドセイルは、確かに才能あふれる神童でございます。ですが、あれはオールドセイル家を継ぐには足りない器です。  それを、私が証明してみせましょう。父上、もし、ウィリアム・オールドセイルよりも私の主張が正しいと解った時には、どうか、お考え直し下さる機会を設けてください。  それから僕は、剣を携えたまま、兄上の元へと直行した。  秘密の地下室には、もう何度も出入りしている。何故なら、地下室の入口は、この屋敷の至るところに存在していたからだ。僕の部屋も例外ではない。  初めて発見したのは、八つの頃だ。それから、知的好奇心のままに、兄にも黙って探検を続けた。この屋敷の全てを、長い年月をかけて調べ上げ、そしてほとんどすべての入口を発見している。さらに、ほんの一部だけであるが、地下の構造も研究してきた。  偶然見つけた地下闘技場に兄上を誘き寄せ、決闘を申し込んで、兄上に勝利する。それが、僕の戦略だった。  戦略にしては、やけに単純だって?それも計算の内さ。何故なら、兄上は頭がいい。例えもし、下手な小細工だろうが緻密な前人未到の天才的戦略を組もうとすると、直ぐ様看破して、返り討ちにされていたところだろう。  ならば、細工を打つよりも、細工を打たない方に、賭けてみた。  必ず、兄上は予測外のことに、呆気に取られることだろう。そして、隙を作る筈だ。  兄上の中の僕は、記憶の中の一歳下の弟のままだ。歳の差が物を言わせていたあの頃とは、もう身体能力も全然違う。
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