小さな雛鳥と迷い猫

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「こらこら。それがやっかみから助けてやった先輩に対する態度か?」 「誰も助けてなんて言ってねえ。お前らが勝手にしゃしゃり出たんだろうが」 「それもそうだ」 「そう言われれば反論の余地も無い」  うんうん。と、勝手に割り込んで、勝手に話を完結させた能天気兄弟に、ユウは眉間に皺を入れた。 「どけ。急いでいるんだ」 「そうかそうか。それは悪かった」 「気を付けてね。何やら最近、暗殺事件が多発しているらしいからな」  一睨みするユウを、ひらりと躱して、飄々とその脇を通り過ぎていく兄弟を、ユウは剣呑な目つきで見送った。 「たっく・・・どいつもこいつも・・・」  だが、その心中には、苛立ちのような感情がむかむかと沸き上がっており、とてもじゃないがいい気分とは言えない状態であった。  それが顔だけじゃなく、全身からも発せられており、その覇気に当てられて、次に自分も挑発してやろうという邪気が一気に削がれた。 「おう。凄いな・・・・・・まるで野生の虎のようだ」 「おっかないおっかない。なあ、ムーニーや」  それを眺めていた、帰ったと見せかけて柱の影に身を隠した『双龍』が、こそこそと耳打ちし合っていたが、その声はユウの耳には届いていなかった。  余計な時間を食ってしまったが、その足は真っ直ぐ、目的の場所へと向かっていき・・・そして、巨大な鉄の扉を前に、停止した。  ユウが取り出したのは、黒のカード・・・・・・『評議会』に選ばれた者達のみが所持することを許される、極秘情報のカードである。  Sランクに上がれば、このカードが二枚与えられる。一枚は表向き、Sランクであることを表明するためのものだ。検問等にはこれを提示することになっている。  だが、それはダミーカードである。  本物は『評議会』、もしくはギルドマスターのみにしか提示しないもので、そこに本当のランクの情報が刻まれている。  『能力』を持った者しか認められない傭兵には、ランクがある。Eから始まって、Sが最高レベルであるのが、世間一般の常識だ。  だが、Sランクにはさらに三つのレベルに別れており、どれも極秘情報扱いとされている。  S、SS、SSS・・・・・・ユウが該当するのは、その内の最高レベルである、SSSランクだ。
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