小さな雛鳥と迷い猫

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 一番隅っこに腰を下ろすと、対面側にニリクも腰を下ろした。  そして、もう一鳴き声を上げて、牛車は出発した。 「さて」  四方を締め切った状態で、ニリクは顔を伏せながら、口火を切った。 「それでは、そなたに依頼したい要件を話そう・・・」  本題に入る前に、ニリクは袖の内に手を突っ込むと・・・・・・ユウの手前に、一枚の写真を置いた。 「そなたに頼みたいのは・・・・・・護衛である」 「護衛?」  蝋燭の灯りに照らされる、涼やかな切れのある顔を、ユウは見つめた。 「そうだ・・・その子供を、そなたに守ってもらいたい」  差し出されたその写真を、ユウは掬い取って、静かに眺めた。  そこに映っているのは、ユウとほとんど年齢の違わない、あどけない少年であった。 「名はリュウ・ブリーズ。赤子の頃より、面倒を見てきた・・・いわば、私はその子の後見人に当たる」  そのファミリーネームに、ユウは一瞬引っ掛かるものを感じたが、直ぐには思い出せなかった。 「時は、六日前のことであった・・・」  馬車とほとんど似た揺れに揺られる静けさの中、ニリクは、事の発端について、語り出した。  特別などといったものは何一つなく、変哲のない、何時も変わらない平凡な日々を送っていた時だ。  突然、その日々が破られた。  何の前触れもなく、突拍子もなく命を狙われることになったのだ。  白昼堂々の襲撃であった。犯人は解らない。誰も見ていない。  一度目の暗殺は未遂に終わったが、報せを聞いたニリクは、直ぐ様子供を保護した。  しばらく何も起こらず、もう大丈夫かと、一瞬だけ気が緩んだ隙を突かれた直後に、二度目が起きた。  事態を察知して、引き返したのが幸運だった。あと一歩遅ければ、確実に殺されていたところ。  いや・・・既に遅かった。  子供は無事だった。無事だったのだが、子供の面倒を頼んでいた二人の弟子が殺された。  考えた末に、ニリクは腕の立つ傭兵に、護衛を依頼することに決めた。  その白羽の矢が、ユウに向けられた、とのことだ。 「そなたの噂は以前より度々耳にしておる・・・その腕を見込んで、直に頼みたい。その子供を、そなたの力で、守ってくれぬか?」  すうっと、細くなった切れ長の瞳が、ユウへと向けられた。
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