小さな雛鳥と迷い猫

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「何とも何とも────大したことが無いんだなあ」  語尾をわざとらしく間延びさせながら、言ってのけた。  最後の言葉に、ユウはふっと笑って見せた。  だが、開き直ったその銀色の瞳は、幻の炎で燃え上がっていた。  そう。このユウ・スウェンラという少年・・・・・・異例のSSSランクとして数々の伝説を残してきたものの・・・・・・煽られ耐性が、とことん低いのであった。 「・・・誰が大したこと無いって?」  ぎらり、と向けられた鋭利な眼光を、ニリクは檜扇を仰ぎながら、さらっと流した。 「別にそなたに言うたつもりは無いぞ。ただの独り言だ」 「ほ~お」  低く唸るような声を、ユウは発しながらも、炎をニリクへと向けた。 「ほれほれ、もう帰るのであろう?よい子が寝る時間は当の昔に過ぎておる。時間を取らせてすまなんだ」  ぱたぱたと、檜扇を仰ぐニリクに、ユウの中で、糸が切れる音がした。 「・・・いい度胸じゃねえか」 「何がかな?」 「・・・この俺をこけにしようとはいい度胸じゃねえかって、つったんだよ!!」  ぐわっと顔を歪ませて、ユウはニリクに向かって、吠えた。 「上等じゃねえか!!この依頼、引き受けた!!だがな、これが終わった後、俺に対するその言いぐさ全部やめてもらうからな!!」 「良かろう。精々頑張るといい」 「あとな!!言っておくが、俺は・・・・・・てめえみたいな大人が、大嫌いだっ!!」  うんと息を吸って、吐かれた言葉に、ニリクは檜扇の影で、にやりとしたり笑った。  それを目撃していたリュウは、無言の下で、燃え上がるユウと後見人とを、交互に見つめた。 ────ちょろい・・・。  その目は、そう呟いているようにも見えた。
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