小さな雛鳥と迷い猫

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******  けたたましく鳴り響くエラーの音に、いい加減苛立ちが上がって来たが、数分も経てば正常状態へとたちまち戻った。  しかし、機械の一部の内部から、煙が上がっていた。 「再起動成功しました」 「制御装置が故障したようです。ただちに修理致します」 「検体、意識不明。コネクトも強制解除されています」 「エラーコードに該当なし。原因不明」  ばたばたと動いているのは、白衣を着た大人達だ。  管理室から、強化ガラスで敷いられた向こう側へと、注意を向ける。  天井から落ちる大量の、太さも長さもそれぞれ不揃いなコードによって繋がれた、カプセルがあり、そこからも煙が上がっていた。  直ぐ様事態を察した何人かが駆けつけたのを眺めながら、次々に不安の声を漏らした。 「これでもう三回目・・・もう、あの検体では限界なのかもしれない」 「だが、そうもいかないだろ!この研究にいくら時間と金を使ったんだと思っているんだ」 「原因不明のエラーが三回連続で起きているんだぞ。その度に修理費が飛んでいってるんだ!」 「これはマザーからの命令なんだ。それなら、他の検体を用意させろ。使えないのなら捨てちまえ」  口々に漏らし、衝突を起こす大人達の声を、聴く者はいないと思われた。  むりやりこじ開けられたカプセルから引きずられたそれは、力の入らない身体を放り、長い髪で隠れた目をぼんやりと、映した。  四肢を持ち上げられて、物のように運ばれながら、かさついた唇から、虫の息と一緒に、霞を吐いた。 ────たすけて・・・・・・。
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