小さな雛鳥と迷い猫

33/94

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「俺の後見人のこと・・・」 「ニリクのことか?あいつ、お前の祖父じゃねえ筈だろ?」  家族関係については、目の前にいる対象者の兄から聞いたことがあるし。  それに、城の中を歩いている時に、あまり表には出せない噂を聞いたことがあるので、ユウも知っている。 「うん・・・でも、俺はじいちゃんって呼んでる」 「・・・ふうん」  明らかにじいちゃんって呼べるような年齢でもない筈なのに、どうしてそう呼ぶのか気になったが、深追いするのも面倒なので、ユウはそれきりにした。  対象者との関係づくりなど、ユウにとっては面倒くさいとしか思えない事項なのだ。  ぺらぺらと、絵本を読んでいる振りをして、後方で自分を見つめる視線を無視していると、また向こうから声が掛かった。 「あのさ・・・・・・兄貴から聞いたんだけど、お前、俺と同い年って本当なのか?」 「・・・だったらどうした?」 「別に。ただちょっと、気になっただけ」  話は短く終わって、沈黙が流れる。 「・・・なあ。お前、七歳でどうやって、SSSランクに上がれたんだよ?」  沈黙に耐えられなかったのか、リュウがまた話題を切り出した。  が、ユウはわざとらしく絵本を閉じて、立ち上がり様、リュウへと振り向く。 「・・・良い事教えといてやる。Sランク以上は全て極秘情報扱いされるんだ。お前のようなガキが足を踏み入れられるところじゃねえ。それ以上の詮索は禁句(タブー)だぜ」  鋭いものを含めたユウの言葉に、リュウはさっと、また更に白くなった。  銀色の瞳と交差して、恐ろしいぐらいの沈黙が這う。虫の音すら、その沈黙の間に分け入ることが出来ないぐらいだ。  その時、その空気を打破せんと、静かに入って来た長身の影があった。  先程話題に上がった、ニリクであった。 「リュウや。今宵はもう寝るが良い・・・な?」  安心させるかのように、優しい声音で、ニリクはリュウの頭を撫でた。 「どうした・・・」  何かを訴える視線を受けて、ニリクはリュウの手前に膝を折り、目線を下の位置にした。  目を合わせるニリクと、ニリクに縋るように見つめるリュウとを一瞥したユウは、咄嗟に目を背けた。 「今宵も私の部屋で眠るか?」 「・・・うん」 「そうだな・・・そうしようか・・・」 「・・・姉貴に電話したい」
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加