小さな雛鳥と迷い猫

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 岩だらけの床に横たわったまま動かないその身体を、仕方ないと言わんばかりに、男二人がかりで運び出した。  小さな身体から漂う、何年も放置された汗と糞尿混じりの匂いに嘔吐中枢を刺激されながらも、手と足を持って運び出した。  髪の隙間から巨大な蚤が姿を現して、思わず手を放した。がつん!と頭から床に打って、血の気が下がったけども、脈が規則的に打っていたので安堵した。 「本当に汚ねえ・・・中を洗うのも、こいつのせいで一苦労だぜ」 「こいつも可哀想なこった・・・『宝胎』の中でも最悪のケースだ」  軽口を叩き合い、子供ながらに憐れな末路を辿っている子供を、物を扱う感覚で運び出す。  そこに含まれていたのは、憐みではないのは確かだ。  研究所まで運んで、やっとの思いで、清掃されたカプセルの中へと、それを横たわらせた。  入れたら次に行う作業は、大量のコードを直接身体に連結させる作業だ。  全身に隙間なく、色多彩のコードを、機械に挿入するのと同じ感覚で、遠慮なく肌の上から身体の内部へと差していく。  この作業が一番大変で、手間が多いのと、検体が激痛を訴えるのが難点だ。この検体も、最初の頃は泣いて暴れていたのだが、モルヒネ注射を打って黙らせてから、注射無しでも暴れることが無くなった。  最後に、大量のコードが繋がれたゴーグルを頭に嵌めて、完成だ。 「・・・・・・“ファルコン”、起動開始」  青いスイッチを押して、ガラス越しに、全員機械へと視線を向けた。  天井からから機械特有の光が照らし始めて、その直下に置かれた巨大な機械のスイッチに、電源が入る。  カプセル内部も点灯し出して、その中で全身をコードで繋がれていた身体が、痙攣を起こし始めた。  全神経に電流が迸るような激痛が襲い掛かって来て、耐え切れずに、ヘッドゴーグルの下で、眼をこじ開けた。 「───────────────────っ!!!!」  カプセルの内側から、言葉にならない悲鳴が劈いた。  だが、その声も、無かったことにされた 「シンクロ率上昇・・・二十パーセント・・・八十パーセント・・・百パーセントを超えました。最大シンクロ率に到達」 「四十パーセント解除。標準超距離計算ソフトが自動アップロードされました」
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