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────たすけて・・・・・・。
船を漕いでいた頭の中に、唐突に響いた微かな声によって、ユウはぱちっと瞼を開いた。
「たすけて・・・・・・?」
この依頼を引き受けてから・・・いや、その前夜から、うろ覚えに視ていた夢に、ユウは虫の報せのような、根拠の少ない予感に駆られていた。
予知夢・・・というには、あまりにも不明慮だ。
だけど、見逃してはならないと、直感が訴えている。
「・・・じいちゃん」
思考に耽っていると、屋根の下から声が聞こえて、目線を下に下げた。
すると、屋根の真下から庭へと、半袖と半ズボンの格好のリュウが出てきて、ユウを見上げた。
「じいちゃんは?」
「・・・・・・さあ。野暮用があるっていって、出て行・・・」
直後。ユウの直感に、何かが引っ掛かった。
息を呑みながら、上空を睨み上げる。
一点を睨むユウの様子に、リュウは不思議そうに首を傾げた。
が。鋭く細められた銀色の瞳に光を宿らせた後、ユウはリュウに目もくれずに、言った。
「・・・・・・逃げろ」
「え?」
「早く逃げろって言ったんだ!!」
鋭く言い放った直後に、それは実現した。
空の一点に、瑠璃色の光が差した。
次の瞬間。結晶の氷柱の連弾が現れて、結界の向こうにいるリュウへと攻撃を開始した。
「家の中に入れ!!」
庭のど真ん中で、腰をついて怯えるリュウへと、ユウはもう一度叫んだ。
がくがくと震えながら、涙目でリュウが邸の中に飛び込んでいったのを見送った後に、空を睨む。
────本体はどこに・・・?
銀色の瞳を走らせて、第六感を働かせた。
敵の位置を探ろうと、索敵能力を張り巡らせる。が。
「いない・・・っ!?」
人の気配すら引っ掛からないことに、ユウは瞠目した。
「どうなってやがるっ!?」
結界への攻撃は、止む気配が感じられない。
比喩ではなく、文字通り何もない空間より、連弾が放たれていた。
撃ち込まれた箇所から衝撃が波紋のように広がって、結晶の氷柱は結界と接触した面から砕け散って、残滓も残らずに消えていく。
不可解すぎる現象に、ユウは動揺を顕わにした。
だが、それもまた、ぴたりと止んだ。
打って変わっての静寂に、ユウは握り汗を感じながら、感覚を極限に澄ませた。
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