61人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
────どこだ・・・?
どこにもいない・・・だったら、敵はどうやって攻撃を仕掛けてきている・・・?
静まり返る邸の中を、ゆっくりと視線を張り巡らせるが、感じられる気配は一つのみ。
ユウの額から、一雫の汗が零れ落ちた、その次の瞬間。
本能的に予感を察知したユウは、またもう一度、弾かれるように空を見上げた。
すると。何もない空間より出現した結晶が、どんどん肥大化していって、形を成した。
ばさりと羽ばたかせるのは、結晶でできた大羽。鋭い鉤爪がついた二本の脚も結晶で、鋭い嘴も、体毛も、そしてその猛禽類の眼も、全て結晶で造られていた。
「鳥・・・?」
鳥の中でも、それは鷹に分類されるものだと気付くのに、少しの時間が掛かった。
まるで命が吹き込まれたかのように、羽を羽ばたかせながら、それは結界の向こうより一声鳴いた。
それは邸を睨むと、羽を羽ばたかせて、先程と比類しない程巨大な結晶の槍を形成し始めた。
完成したそれに、不可視の力が付加されたのを見て、本能的にユウは危険を察知して、屋根から素早く降りた。
「おい!!逃げるぞ!!」
邸の中を土足で入り込み、部屋の奥で丸くなるリュウの腕を引っ張り上げた。
「逃げるって、どこに・・・?」
「いいから早くしろ!!ぐずぐずするな!!」
涙目で見上げるリュウを叱咤して、ユウは腕を強引に引っ張りながら、咄嗟にリュックサックを掴んだリュウと共に、廊下を疾走した。
直後。力を上乗せした巨大な槍が放たれた。
切っ先が直接結界とぶつかって、拮抗した。
それまで、鼠一匹すら侵入を許さなかった、絶対の防壁を築き上げていた結界が追い込まれて行って。
そして、びしっと皹が入り───────音を立てて破られた。
忽ち無防備となった邸へと、結晶の連弾が放たれた。
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガっ!!
容赦の無い氷柱が、上から邸を破壊していき、中を疾走するユウとリュウをどこまでも追跡した。
後ろからどんどん迫りくる、容赦の無い弾丸を、ユウはリュウを引っ張りながら、ひたすら疾走して逃げていた。
邸の外へと出た後も、攻撃は続けられ、地面に突き刺さっていく。
最初のコメントを投稿しよう!