小さな雛鳥と迷い猫

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────どこだ・・・?  どこにもいない・・・だったら、敵はどうやって攻撃を仕掛けてきている・・・?  静まり返る邸の中を、ゆっくりと視線を張り巡らせるが、感じられる気配は一つのみ。  ユウの額から、一雫の汗が零れ落ちた、その次の瞬間。  本能的に予感を察知したユウは、またもう一度、弾かれるように空を見上げた。  すると。何もない空間より出現した結晶が、どんどん肥大化していって、形を成した。  ばさりと羽ばたかせるのは、結晶でできた大羽。鋭い鉤爪がついた二本の脚も結晶で、鋭い嘴も、体毛も、そしてその猛禽類の眼も、全て結晶で造られていた。 「鳥・・・?」  鳥の中でも、それは鷹に分類されるものだと気付くのに、少しの時間が掛かった。  まるで命が吹き込まれたかのように、羽を羽ばたかせながら、それは結界の向こうより一声鳴いた。  それは邸を睨むと、羽を羽ばたかせて、先程と比類しない程巨大な結晶の槍を形成し始めた。  完成したそれに、不可視の力が付加されたのを見て、本能的にユウは危険を察知して、屋根から素早く降りた。 「おい!!逃げるぞ!!」  邸の中を土足で入り込み、部屋の奥で丸くなるリュウの腕を引っ張り上げた。 「逃げるって、どこに・・・?」 「いいから早くしろ!!ぐずぐずするな!!」  涙目で見上げるリュウを叱咤して、ユウは腕を強引に引っ張りながら、咄嗟にリュックサックを掴んだリュウと共に、廊下を疾走した。  直後。力を上乗せした巨大な槍が放たれた。  切っ先が直接結界とぶつかって、拮抗した。  それまで、鼠一匹すら侵入を許さなかった、絶対の防壁を築き上げていた結界が追い込まれて行って。  そして、びしっと皹が入り───────音を立てて破られた。  忽ち無防備となった邸へと、結晶の連弾が放たれた。  ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガっ!!  容赦の無い氷柱が、上から邸を破壊していき、中を疾走するユウとリュウをどこまでも追跡した。  後ろからどんどん迫りくる、容赦の無い弾丸を、ユウはリュウを引っ張りながら、ひたすら疾走して逃げていた。  邸の外へと出た後も、攻撃は続けられ、地面に突き刺さっていく。
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