小さな雛鳥と迷い猫

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 段々と距離を詰められていく中、ユウはリュウを投げ捨てて、振り向き様、右の大腿部に巻いたホルスターより、黒の装飾銃を引き抜いた。 「謡え、『死型(DETH・SIZE)』!!」  高らかに唱えた直後。先に装飾銃が振動を起こし始めて、次に小柄な体躯から銀色の波動が爆発した。  迫りくる結晶の雨を、結界を張ってリュウごと守ると、装飾銃の銃口を空へと向けた。 「【ブラスト】っ!!」  引き金を引くと、銃口から、巨大な銀の衝撃波が放たれた。  それは結晶の氷柱を打ち破り、真っ直ぐ結晶の鷹へと直行していく。  鋭い嘴から吠え声が上がった。すると、広げた羽より結晶の氷柱が出現して、矛先を迫りくる衝撃波へと向けて連弾した。  結晶の雨を撃ち落としながら飛行していた衝撃波も、段々と勢いが弱まり始めて、先が届くことなく消滅した。  視界を覆う濃厚に立ち込める土煙を、ユウは黒装束の裾で払いのけて、上空の敵を睨眼した。 「てめえが敵か?」  光を宿した銀色の瞳を鋭く細め、地を這うかのような低い声を発した。  空中に停止する大きな鳥は、銀色の瞳を無機質に見据えたまま、動かない。  攻撃の意思が途端に感じられなくなって、ユウはまた、リュウの腕を引っ張って駆け出した。  夜も過ぎて、静まり返る王都の中を、二人は逃げ続けた。
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