小さな雛鳥と迷い猫

43/94

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
******  邸に張り巡らせていた結界が破られた瞬間を、ニリクは敏感に察知した。 「結界が、破られたか・・・」  幾百数多の術を施して築いていた結界は、例え空爆を受けようとも、破られることは絶対にない、絶対強固のものだった。  それが破られたとなると、相手は相当の術者だ。このニリクと肩を並べるか、もしくは自分以上の潜在能力の持ち主となる。  いよいよ、確信へと変わりつつある。  密偵に遣わしていたジンより情報を聞いていた時より、ニリクはずっと仮定を抱き続けていた。  満月が浮かぶ夏の夜空を、ニリクは見上げた。  散りばめられた光の欠片を見据えながら、切れ長の金の瞳に、憂いを宿らせた。  瞬きした後、空から目を逸らすと、また歩みを再開させた。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加