小さな雛鳥と迷い猫

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******  後ろから迫りくる結晶の連弾から、リュウを引っ張りながらひたすら逃げ走っていたユウは、王都を抜けた後に、森の中へと逃げ込んだ。  地面を穿ちながら迫る雨を、咄嗟に横の茂みの中に飛び込んで、やり過ごした。  直線上に連打されていったのを見送った後、気配を殺しながら、ユウは茂みの影より伺った。  夜にも関わらずに、しっかりと夜目の利いた大鷹が、敵を探して旋回している。  隠れているこちらに気付いていない様子を確かめた後、ユウは、へたり込んで荒い呼吸を繰り返すリュウを一瞥した。  靴も履かずに連れ回したせいで、裸足の足が土で大分汚れていた。リュックサックをかるうその背は大きく上下に動いており、それに血の気が失せた顔色から察するに、これ以上走り回すのは限界のようだ。  舌打ちを鳴らしてから、ユウは懐から銀弾を六個程取り出すと、リュウを囲むように、地面に一つずつ埋めていった。  最後の一個を埋めると直ぐ、埋まった銀弾同士が結び合い始め、線を描くと、結界を構築した。 「ここで大人しくしてろ」 「ま・・・っ!!どこ、に・・・っ!!」  咽喉が灼けて喋るのもままならない様子のリュウを置いて、ユウは茂みから飛び出した。 「こっちだ!!」  声を響かせて、注意を向けさせることに成功したユウは、装飾銃に『氣気』を込めながら、好戦的な笑みを浮かべた。 「喰らいな!!」  引き金を引くと、また、巨大な衝撃波が空を縦断した。  直行するそれを、空中でひらりと躱した後、ユウに向かって威嚇の声を上げた。  注意を背けながら、リュウから離れるように駆け出して、走りながらも標準を敵に突き付ける。  その時、上空を舞う鳥が、一声鳴いたと同時に、結晶の氷柱の連弾を再開させた。  ダダダダダダダダダダっ!!と、容赦なく乱射してくる最中、ユウはもう一度、波動を爆発させた。 「【輪舞曲(ロンド)】!!」  銃口から放たれたのは、三段階に分かれた衝撃波の雨。  一段ずつ、連弾とぶつかっていき、相殺していく。  連弾を防がれて、大きく鳴くそれへと、ユウは銀光の瞳を見据えながら、引き金を引く。 「【輪舞奏鳴曲(ロンドソナタ)】!!」  三段に別れた衝撃波の雨の中心に、衝撃波が重なって、敵へと直行した。  結晶の連弾を持って、立ち向かったが、中心の一発が結晶の身体を射抜いた。
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