小さな雛鳥と迷い猫

45/94

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
 ばりーん!  まるで、ガラスのように、全身に皹が入り、音を立てて砕け散った。  連弾も止んで、嵐が過ぎ去った静けさに満たされながら、ユウは静かに気配を手繰った。  抉られた跡が残る地面には、もう結晶など一つも残っていない。まるで、悪い夢でも視ていたような錯覚が起こされるようで、気味が悪い。 ────やったか・・・。  そう判断して、ユウは装飾銃を降ろした。 「・・・倒したのか?」  それまでずっと、茂みに隠れていたリュウが、ひょっこりと頭を出してきた。  それには答えずに、右のホルスターに得物をしまおうとする。  が。背筋に走った悪寒に、ユウは直前で目を見開いて、またもや空を見上げた。  するとまた。何もない空間から、結晶の連弾が再開された。 「のわっ!!」 「わあああああああああああああっ!!」  咄嗟に二人は同時に頭を守りながら、地面に伏した。  二人の周りの地面を穿つ結晶の嵐の中で、二人は体勢を低くすることで、自分の身を守った。 「やったんじゃねえのかよ!?」  頭を両手で抑えるリュウから、非難の声が上がる。  舌打ちを打ったユウは、激しい地鳴りの最中に、すくっと立ち上がって、上空へと大きく息を吸った。 「おいこら!!どこの誰だか解らねえが!!用があるなら、正々堂々姿を現しやがれ───────っ!!」  大きな声を張り上げるも、それは轟音によって、掻き消された。  かに思われたが、空中に、突如としてまたあの結晶の大鳥が、顕現した。  一睨みしたユウは、体内で『氣気』を爆発させた。  銀色の奔流で、無理矢理軌跡を逸らすと、リュウを置いて地面を蹴り上げた。  近くの木の幹に両足をついて、渾身の力で蹴り上げて、斜面に飛んでまた蹴り上げる。  それを続けて、助力を着けて、空へと舞い上がった。  鳥はどうやら予想もしていなかったらしく、虚を突いた隙をついて、空を飛び上がりながら、その翼を鷲掴みにした。  途端に、ばさばさと、激しく抵抗する鳥を、ユウは身体を絡めて拘束すると、銃口を首元に突き付けて、引き金を引いた。 「【ブラスト】っ!!」  至近距離からによる衝撃波によって、身体全体が飲み込まれて、消失した。  連弾も止んで、亀のように丸くなっていたリュウは、そろそろと顔を上げた。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加