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夜の空に浮かぶ月は、綺麗な弧を描いている。
かつては闇と呼ばれた暗い天に、太陽と比べて小さくも銀色に輝いて、光を地上に送っている。
そして、それと同じ色をした二つの眼が、建設されて三十年経とうとしていた建物の、今や瓦礫の屑と化した山の上で怜悧に見下ろしていた。
見下ろしていたものは、人間だった。
全身に己のものでない返り血を浴び、片足に銃創を穿ち、顔は恐怖の色で一色されていた。
自分よりも遥かに小さな影を、男は指を差した。
「おま・・・その銃・・・その、眼・・・・」
銀色の眼と、右手に握られた黒い装飾銃を目にして、自分の死期を思い知らされた。
その黒い装飾銃・・・銃身に、『死型(DETH・SIZE)』と書かれたその文字が、頭に焼き付いた。
唐突に、記憶が蘇る。
最近、噂になっているとある『能力者』。
黒ずくめの格好に、銀色の瞳。そして、“死神の鎌”と似て非なる銃を持った、Sランク集団『七帝神』の一人。
一度会えば死と云われている、不吉。
その名は・・・・・・・。
「銀色の────」
言う前に、引き金が引かれた。
一発の銃声の後、非人間となって倒れた。
一仕事終えたそれは、ふうと息を吐いた。
「・・・・・・・・・・弱え」
まるで、まだ食欲が満たされない子供のように、呟いた。
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