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木の幹の影に逃げ込んだユウとリュウは、揃って荒い呼吸を何度も繰り返していた。
「くっそ・・・何にも正体が掴めねえ。こりゃあ、危険だな」
装飾銃を構えながら、外を警戒するユウへと、リュウはぐわっと口を開いた。
「そもそもお前が馬鹿にしたのがいけないんだろ!!」
「ああ!?」
リュウの言葉に反応したユウに対して、畏怖を一切合切脱ぎ捨てたリュウは、続けて抗議の声を上げた。
「俺を見捨てようとしただろ!!じいちゃんの言いつけ無視して、俺を殺すつもりだったんだろ!!」
「てめえ、俺はお前を守ってやっている立場にあるんだぞ!!何だその言いぐさは!!」
「お前のせいだっつうの!!謝れよバカ!!」
「んだとゴラア!?てめえ、誰に向かって馬鹿つった!?」
ぐるるる!!
互いに目線を合わせて、眼光だけで火花を散らし合い始めた。
その最中、リュウのリュックサックから、機械音が漏れた。
「あ、兄貴だ!!」
直ぐ様中断させると、リュウはリュックサックを肩から外して、チャックを下げると、ごちゃごちゃとする中身を手で掻き分け始めた。
ずっと音を発し続ける、黒い機械を取り出すと、青に点滅するボタンを、ぽちっと押した。
「兄貴!」
≪・・・リュウ!≫
どうやらそれは通信機らしく、機械から聴こえた声に、ユウはぷいっと視線を真反対の方向に背けた。
≪リュウ、無事?怪我は無い?≫
機械越しの兄からの、心からの安否の声に、リュウはぐずっと涙目になってしまったが、腕の肌でごしごしと、乱暴に拭った。
「俺は無事・・・」
≪良かった・・・そこに、死神くんはいる?≫
「うん・・・」
≪代わってくれる?≫
機械を通しての兄の声に、リュウは頷いた後、黒い機械をユウへと手渡した。
それを奪うように取ると、それに向かって、ユウは文句を言うような口調で、直ちに問い詰めた。
「てめえは今まで何やってたんだ?てめえの家族が危ういって時に、それでも部隊の総隊長か?」
地を這うような声で抗議の言葉を投げつけた後、機械の向こうで、唇を噛み締める気配がした。
≪・・・ごめん・・・だけど、襲撃者の正体が解ったんだ≫
「っ!本当か?」
≪ああ・・・≫
「結局何だったんだ、あれは?敵の気配も感じられない。どこにいるかも解らねえ。一体どっから撃ってきやがんだ」
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