小さな雛鳥と迷い猫

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 『ジュエルディー』というのはあくまで総称。実のところ、『ジュエルディー』は七つの門に分かれている。  金の『魔法石』を操る、ゴルディー。  銀の『魔法石』を操る、シルディー。  瑠璃の『魔法石』を操る、ラピス=ラズディー。  玻璃の『魔法石』を操る、クリスタルディー。  瑪瑙の『魔法石』を操る、アガディー。  シャコの『魔法石』を操る、デュラディー。  珊瑚の『魔法石』を操る、コーラルディー。  以上の七門に別れており、それぞれ門には等級も存在している。その上、それぞれの総勢はかなり多いのだ。『四大貴族』の中でも、多勢を誇る家系なのだ。  彼らは北の地域を統率しており、また、『四大ギルド』の内の一つの支えともなっている。  そのギルドの名は─────『アイス・キャッスル』。  北の大ギルドと称される、あの『アイス・キャッスル』なのである。  リュウはどうやら馴染みが無いらしく、話が呑み込めていないが、ユウは驚愕の反応を示した。 「じゃあ、北の奴らの仕業だっていうのかよ!?」  しかし。と、ユウは通信機を握ったまま、リュウへと振り向いた。  『四大ギルド』の間には協定がなされてある。互いに領地を侵さない限り、一切接触はしないという。もしこれが破られたとなれば、一大戦争が勃発することにもなり得るのだ。  それを、北の彼らも重々承知の筈だ。それなのに・・・それなのに、南の大ギルドのSランク傭兵の家族を狙うなどと、浅はか過ぎる。  一体、何が目的なのか?  強い疑念が浮上したが、それを察したジンでさえも、それに辿り着いていない様子であった。 ≪とにかく、この機械は直接本体を叩かない限り、ずっと攻撃を続ける≫ 「・・・成程な」  瞬きを続けるリュウを睨んでいたユウは、視線を逸らして、通信機へと変えた。 「だったら、直接親玉をぶっ倒した方が速いってことだろ?場所は?」 ≪・・・それが、ボクが踏み込んだ時にはもう引き上げられた後で、今捜索中だ≫  ユウは堪らず、腹正しく舌打ちを打った。 ────どうする?  このまま逃げ続けたところで、埒が明かない。  敵は無限に攻撃を仕掛けてくる機械。こっちは生身の人間。しかも一人は、戦ったことすらない子供である。限界なのだ。
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