小さな雛鳥と迷い猫

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 何か・・・何か、方法は無いのか!? ≪そういえば、ニリクさんは?≫  通信機からのジンの問いに、リュウが答えた。 「じいちゃんはどっか行った・・・」 ≪え・・・そっか・・・・・・ボクもさっき会って別れたばかりだったんだけど、何か言ってた?≫ 「何も・・・」  震えた声で答えるリュウの隣で、額に拳を当てていたユウだったが・・・・・・唐突に、記憶が鮮明に蘇った。 ────もし、私が帰らぬようなことが起きれば、一つ預かってもらいたいものがある。 ────は? ────このニリクが、最初で最後に手掛けた作品・・・絵本のことだ。あれには深い想入れがあってな。失くすのが惜しい。  あの時。  思えば、何で突然、あんなことを言い出したのかっ!? 「絵本・・・・・・『ことりとこおりのしろ』・・・っ」  ユウにも馴染みのあるそれに、何かヒントが隠されている。そう、直感が働いた。  その呟きを拾い上げたリュウが、リュックサックの中を弄り出して、そして手を引っこ抜いた。 「それって・・・これのこと?」  差し出された四角い本に、ユウは銀色の瞳を見張った。 「これ・・・持ってたのか?」 「リュックの中に入ってた」  答え終わる寸前で、ユウはリュウの手から奪うように取り、そして表紙を開いた。 ────『ことりとこおりのしろ』。
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