小さな雛鳥と迷い猫

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 華奢な背中をしばし見つめた後、弾かれたように立ち上がって、一方向へと一目散に駆けだして行った。  それを気配だけで送ってから・・・・・・ユウはまた、舌打ちを打った。  何故だか、胸の中がもやもやする・・・・・・それはきっと、嫌な記憶を思い出したからと、そう思いたい。  どうしてあんなこと言ってしまったのか、自分でも解らないまま、ユウはフードを深く被り直した。  それから夜空へ戻したその瞳には、月光をそのまま切り映したかのような光が、宿っていた。 「・・・・・・出て来いよ。さっきの続きをやろうぜ」  空に向かって挑戦的に吐くと、数多の氷柱の結晶が、ずらりと並んで出現した。 「今すぐてめえの本体見つけてぶっ殺しに行くからな・・・この俺を敵に回したこと、後悔しやがれ!!」  きいん、と、瞳孔を縮小させたと同時に、結晶の連弾が開始された。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」  容赦なく降り落ちてくる雨の隙間を縫いながら、ユウは雄叫びを上げ、装飾銃を構えた。
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