61人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
それを合図に、ぼろぼろの身体から、瑠璃色の波動が爆発した。
凄絶な風が、カプセルの隙間から外へと流れこみ、大きな奔流を生じて、瞬く間に空間全土を煽らせた。
奔流が吹き荒れる最中、突然、カプセルが結晶に覆われ始め、波となって広がり始めた。
複数の悲鳴が上がり、動転した白衣の大人達が、我先にと逃げ出したが。
しかし、それから逃げられることなく・・・・・・結晶の一部となってしまった。
その影響は、別時点でも現れていた。
それまで、ユウと対峙していた結晶の鷹が、突然のたうち回り始めた。
ばさばさと、身体を大きく捩じりながら、苦しんでいるように暴れる鷹を見据えて、ユウは急停止した。
「何だっ!?」
フードの下で、銀色の瞳を見開きながら、凝視する。
苦しそうな鳴き声が夜空に響いた直後。ぱりん。と、線が入って、たちまち中心から粉々になった。
突拍子もなく唐突に起きた現象に、ユウは瞠目しながら、装飾銃を降ろした。
────一体・・・。
不可解な謎を残して、自分から砕け散ったとも見れる行動に、ユウはしばらく呆然としていた。
しかし、空中で砕けた結晶の欠片が、ゆっくりと空から雪のように、落ちていくのを目で捉えた。
その内の一つが、自分の上から落ちてきて、掌を広げてそれを受け止めた。
掌にすっぽりと収まる大きさのそれを、目を丸くしながら見つめた。
その時。
────たすけて・・・・・・。
唐突に、頭の中に、少女の声が響いた。
はっとして、周辺を見回すものの、気配は感じられず。
まさか・・・・・・と思い、ユウは今しがた手中の中に収めた結晶へと、視線を降ろした。
すると、色の無い結晶の中心が、瑠璃色の光を宿していた。
────たすけて・・・・・・。
また聞こえた声に、ユウは気のせいではないと、確信を抱いた。
その声に、非常に強い既視感を抱いたが、時間を置かずに直感で解った。
ここ数日、毎夜のように夢に現われる・・・・・・助けを求める声だった。
逡巡したユウは、リュウが走って行った方向へと、視線を向けた。
森の向こうより、サイレンの音が聴こえる。治安維持部隊が到着したという合図だ。
ジンがリュウの身柄を確保したのだと確信して、ユウは瑠璃色の結晶を握りしめると、北の方角へと駆け出した。
最初のコメントを投稿しよう!