小さな雛鳥と迷い猫

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 早速立ちはだかった難問に、ユウは太陽の日差しを受けながら、頭を捻った。  と、その時。ユウの握りこぶしの間にあった結晶が、仄かに光り出した。 「ん?」  些細な反応に、ユウは直ぐに気が付いた。  指の間から漏れる瑠璃色の光に、目をぱちくりさせ、開いて見た。  すると、それ自身に意思が宿っているかのように、宙に浮いた。  目をきょとんとするユウの眼前で、それは宙に浮きながら、ゆっくりと動き始め出して、その後をユウは何となくの感覚で付いて行った。  雪の絨毯の上を踏みしめながら、氷の城の根元を巡回すると、丁度裏側辺りで止まった。  寒い風が凪いできて、ユウは小さくくしゃみを出して、それから目線を根の元へと移動させた。  すると、氷の一部に、不釣り合いな排水管の鉄の檻があった。  檻を外して、中を覗いてみると、真っ暗闇であるが、中へと続いているみたいだ。通路はかなり小さいが・・・ユウの体格なら、問題は無いだろう。  先に結晶が入って行って、次にユウが続いた。  狭くて暗い細道を、結晶が灯りとなって照らして、お陰でユウは困ることなく進むことが出来た。  進んでいる内に、鉄格子を見つけて、音を立てない様に気を配りながら、外した。  身軽な動作で昇り出ると、そこはもう、氷の城の中だった。  ぱんぱん、と簡単に黒装束に付着した埃を払っていると、人の気配を察知して、さっと柱の陰に隠れた。  案の定、夏には不釣り合いな分厚い外套を着た門下生が、憲兵の為巡回していた様子だ。  気配を殺してやり過ごす中で、ユウは視覚を遮断して、一回深呼吸した。  第六感だけを働かせ、研ぎ澄ませた。  広範囲にまで探知能力を広げて・・・・・・それから、ニリクらしき反応を、探知した。  気配の位置を掴むと、黒装束に『氣気』を流し込み、自分の姿を背景と同化させた。  その時点で、結晶は自分の役目を終えたとばかりに、砕けて消えた。  それを一瞥したユウは、直ぐ様、ニリクを探す為、透明になったまま、城の中を周り始めた。
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