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たすけて。たすけて。だれかたすけて。
お母さま。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
どうしてたすけてくれないの?
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
なにもわるいことしてないよ。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
いいこにするから、おねがい。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
父さま。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
父さま。お母さまが、たすけてくれないの。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
父さま。きこえてたらおねがい。
たすけて。たすけて。だれかたすけて。
このこえをとどけて───────かみさま。
涙が零れた。
それは、ニリクの涙ではなく・・・・・・ここで、何百回も祈り続けた、娘の涙だ。
それら全ての憧憬が、ニリクの頭の中に流れ込み。投影させた。
見せたのは、その場に残っていた、娘の思念。そして、強い感情だった。
隙間も無い程線が刻まれた壁に顔をぴたりと寄せて、ニリクはまだ見ぬ娘へと、思いをはせた。
「フェイルよフェイル・・・・・・憐れな娘」
その時になって、ニリクの気配を追って地下へと潜り込んだユウが、一つ一つの地下牢を確認し、そしてその内の一つに閉じ込められていたニリクを発見した。
「ニリク!!」
がしゃん!!と、檻を強く揺らす音によって、ニリクは現実に引き戻された。
「ユウ・・・」
ユウの登場に、軽く驚いていると、装飾銃の銀弾で無理矢理鍵をこじ開けたユウが、中へと侵入した。
「ぼさっとするな。早く出るぞ!」
ニリクの腕に両腕を絡めて引っ張り上げようとするユウだったが、その前に、空いていた手で腕を掴まれた。
「リュウはどうしたのだ?まさか、置き去りにしたのか?」
「護衛対象なら、『瞬神』に任せたよ・・・ていうかな、あんたもまだるっこしいことしてないで、最初からあいつに全部任せておけよな」
「戯けが・・・そなた、それでも傭兵か?護れと命じた筈の対象から自ら離れるとは・・・選択を見誤ってはならん」
切れ長の瞳に眼光が走って、鋭い視線がユウを射抜いた。
綺麗な顔立ちもあって、その凄みを前に震え上がってもおかしくはないのだが。
だが、ユウはぷつん、とこめかみの血管を収縮させた。
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