小さな雛鳥と迷い猫

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「一度言っただろうが!!てめえのような大人が大嫌いだってよ!!てめえの言う事なんか聞くか、このクソったれ!!俺は誰の指図も受けねえし、護ると決めたもんだけ護る!!なんか文句あるっていうのなら、その頭に一発弾ぶち込むぞ!!解ったらその口を閉じて、俺に付いてこい!!」  ぐわっと口を開き、凄まじい形相で喚き散らすユウ。それに、ニリクは目を丸くして、言葉を失った様子だった。  言いたいことを吐いた後・・・・・・ぽかんとしていたニリクは、小さく口元を緩ませた。 「そうか・・・・・・それが、ユウ・スウェンラという男だ」 「何を俺のことを知ったような口を利いてやがる?それよりも、ここからさっさと出るんだよ、おら」  と、腕を引っ張ろうとするけれど、強い意思を瞳に秘めたニリクの言葉によって、引き止められた。 「ユウよ・・・・・・そなたを男と見込んで、頼みがある」 「・・・あ?」  眉間に皺を寄せるユウへと、ニリクは目と目を合わせながら、言った。 「ここのどこかに・・・・・・私の血を分けた娘がいる。その娘を保護し、護ってもらいたい」 「・・・え・・・?娘?」  目を丸くするユウに、ニリクは頷いた。 「居場所は解る・・・というより、もう調べがついておる。そなたがここにいるということは、もうジンより報告を受けたのであろうが・・・・・・襲撃者たる『ファルコン』の正体こそが、私の娘だ」 「な・・・それは本当か!?」 「ああ」  『ファルコン』の動力の源は、『魔法石』による『氣気』。  誰か一人の『氣気』によって動いて、あとはスーパーコンピュータによる動作となる。  娘は、その為の人身供物に捧げられたのだ。  だが・・・・・・恐らくは、その間の意識は残っていた筈だ。  きっと、自分のせいで数多くの人々が死んで行く様を、見てきた。  そうでないと、説明のつかない箇所がある。  突然攻撃をしたり、と思えば唐突に止んでいた理由────それは、ニリクだ。  ニリクがいない時に限って攻撃を開始しており、その場に駆けつけると同時に攻撃がぴたりと止んでいた。それも毎回。  百発百中の絶対兵器が、子供一人に何度も手こずっていたのは・・・娘の意思が阻害していたからだ。  この世でたった一人の父を守るという、娘の意識が。
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