小さな雛鳥と迷い猫

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******  氷の城に一画・・・数年前に、マスターにより認められて提供されていた研究室が、突如、結晶によって覆われたのを目の当たりにして、城の憲兵を担当する門下達は、未曾有の事態に一同揃って、慌てふためいていた。  干渉しようと、ラピス=ラズディーの門下数名が、結晶の上に手を置いたが、強い力によって弾き返された。 「一体、どうなっているんだ!?」 「解りません!!何者かによって、機械自体が機能を失っている模様!!」  事態を調査しようにも、その研究に携わっていたもの達が丸ごと結晶によって飲み込まれてしまっているので、最善の策が見つからずに、立ち往生を繰り返していた。  が。その時。 「侵入者!!」 「構え!!」  入り口で屯していた門下の何人かが、疾走してくるニリクとユウに気が付いて、陣を組んだ。  最初にラピス=ラズディーの門下達が並び、結晶の矢を構築すると、それをユウとニリクに向かって放った。  風を切って飛来するそれを、ユウもニリクも難なく回避して、そしてユウが『氣気』を爆発させた。 「【ブラスト】っ!!」  装飾銃の銃口から放たれた衝撃波によって、前列を組んでいたラピス=ラズディーの列が吹っ飛ばされた。  またもう一度、ユウは衝撃波を放ったが、後列を組んでいたデュラディーの門下による、巨大シャコガイの軍列の盾によって、弾かれた。  ユウが舌打ちを打った直後。顔の両横より、霊符の嵐が通り過ぎた。  一斉に、並ぶシャコガイに、大量の霊符が張り付いた後、ニリクは印を組んだ。 「爆っ!!」  瞬間。霊符が一斉に爆発した。  シャコガイだけでなく、門下も巻き込んだ鮮やかな一手に、ユウは内心で感嘆した。 「意外とやるじゃねえか」 「まあな」  心からの感嘆を口にするユウに、ニリクは涼しく答える。  しかし、敵も甘くなく、撃墜された仲間の代わりに、次々と戦隊を組んで、立ちはだかった。  それを見据えた銀色の瞳に、月光のような輝きが満ちた。  装飾銃を構えようとした、その直前。  どくん!と心臓が強く脈打って、次に頭の一点に、強烈な眠気が差し込もうとしてきた。  自分の身体が限界に近くなったのだと自覚したユウは、悔し気に唇を噛み締めた。 ────くそ・・・・・・さっきの戦いで、思いっ切り箍を外しすぎちまった。
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