小さな雛鳥と迷い猫

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 大きな支障は無いが、だが、もし高ランクの『能力者』の戦闘が始まってしまえば、身体がもたない。  と思ったその直後。ニリクがばさり、と狩衣の裾を大きく翻し、ユウを制した。 「・・・行け。私が活路を見出す」  まるで、ユウの状態を鋭く察知したかのようなニリクの言葉に、ユウは一瞬虚を突かれたが、頷いた。  それを気配だけで察したニリクの足元から、凄絶な波動が流出し出した。  渦を巻き始めた奔流を前に、『魔法石』を持った者達は、息を呑んだ。 「あ・・・あれは、ニリク・キャナリー!?」 「どうして・・・あの最高峰の呪術師が!?」  驚愕の声を上げる一軍に、ニリクは光を宿した鋭い眼光を向けた。  その時─────────巨大装置の中で意識を無理矢理奥底に眠らせていたものが、その波動を近くで感じると同時に、色違いの眼を覚醒させた。 ────だめ・・・・・・。  意識の中に、別の映像が流れ込む。  それは、この機械が見せている、現在進行形の光景。  武器を持った大勢の群れと対峙する・・・・・・片方と同じ目を持った、男性だ。  やめて・・・・・・そのひとを、ころさないで・・・っ!!  無数のコードが差された手が震え出し、強制的に電源が落とされていた機械が────途端に動き出した。  やめてええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!!  声にならない悲鳴が、内側から劈いた。  その刹那。覆っていた結晶の膜が一斉に剥がされて、その姿を晒した。  姿を現した機械群に、電流が迸り、稼働を促した。  突如の事態に、それまでユウとニリクに気を逸らしていた者達が、端から振り向いた。  直後。巨大な結晶の槍が、肉体を貫いた。 「うわあああああああああああああああああああああああああああああっ!!」 「ぼ、暴走だ!!『ファルコン』が暴走した─────っ!!」  恐怖に喚き散らす者から次々に鋭利な刃が突き刺さり、そこから結晶が広がって、ばたばたと絶命していく。  血の湖が出来始めて、命の危険を感知して、一斉に逃げ惑うもの。一人たりとも逃がさないとばかりに、結晶が飛弾する。  血を吐きながら倒れていく前方を見据えて、ユウとニリクは同時に目を見張った。 「何だっ!?」  声を荒げたのはユウの方だ。
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