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刹那。口に出されたその名は、魂を強く揺さぶった。
大きく身体を弓なりにしたまま、娘はぴたっと止まった。
その一瞬の隙を、銀光の瞳が見逃さなかった。
「【諧謔曲(スケルツォ)】!!」
銃口から放たれた衝撃波が、壁に反射して、床、全面へと弾く回数が増えるごとに加速していった。
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドっ!!!!
何度も反射を繰り返すそれは、装置だけでなく、コードも機械も破壊していった。
そして、天井の装置が爆発した。
「わあっ!!」
爆風に呑み込まれ、風に煽られて、ユウは後方に吹っ飛ばされた。
飛んだ小さい身体を、ニリクが受け止めたが、それでも止まない風に足元から浮いてしまって、ユウと丸ごと地面に転がった。
ふしゅう・・・と、静けさが降り、ユウは身体を起こして、下敷きになったニリクを顧みた。
「ニリク!!大丈夫か!?」
薄汚れた端正な顔に、ユウは呼び掛けた。
すると、一回呻いてから、閉じていた瞼をゆっくりと開いた。
「・・・・・・娘を・・・」
安堵していた傍らで、その口から吐かれた微かな息を耳に拾い、ユウはニリクに視線を向けながら離れた。
元は研究所だった空間に土足で踏み入れて、丸焦げになった鉄くずを、剥がしにかかる。
小さな指を隙間から引っ掛けて、足をついて、身体全体で剥がしにかかる。
ギギギ・・・と、僅かであるが、少しだけ動いて。体勢を変えて、もう一度渾身の力を込めた。
無理矢理こじ開けた後、出来た隙間から、身体をのめり込んで、中を覗いた。
機械の中心に、酷く痩せこけた少女の身体が横たわっていた。長くてさらさらとした黒い髪が顔を・・・身体全体を覆っていて、着ていたのは元は白かった筈の薄い服一枚。その下から無数のコードが伸びていて、肌に直接差した証拠である赤い斑点がある。コードは服の下だけでなく、棒きれのように細い手足全てにも、隙間なく突き刺さっていた。
「おい!!おい!!しっかりしろ!!」
声だけでユウは娘へ呼び掛けたが、反応が無い。一瞬死体かと疑ったが、髪の隙間に見える紫色のかさばった唇が僅かに動いていたのを見て、コードを取り外すことから取り掛かった。
抜いた先から引き千切った黒装束の布切れを巻いていき、服の下から伸びるものは、ナイフで斬っていく。
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