小さな雛鳥と迷い猫

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「謝らなければならぬのは私の方だ・・・・・・私の弱さが、お前を苦しめた。いくら死んでも償い切れぬ」  許してくれ。  切れ長の瞳から零れる悔恨の涙から、娘は目が離せなかった。  涙が乾いていない目を向けながら、ニリクは続けた。 「・・・外の世界に、私の同胞が四人いる。その内の二人がまだこの国に残っておる。名はナペレとノガード。もしもの時は、その者達を尋ねなさい。私の代わりにお前を守ってくれる」 「父さま・・・っ!!」  堪え切れず、娘も涙を流し始めた。  共に涙を流し合いながら、強く抱擁を交わした。  少しでも力を入れれば折れそうな肢体に腕を回し、ニリクは切れ長の瞳に、鋭い眼光を迸らせた。  ユウが装飾銃の力を持って、一体ずつ確実に倒している真っ最中に、ニリクは身体の中心に溜め込んだ波動を一気に爆発させた。 「っ!?ニリクっ!!」  最後の一体を衝撃波で粉砕した後に、ユウは身体ごと振り向いた。  砕け散った氷柱の間から、無数の霊符を操るニリクが、娘をその両の腕に抱きながら、鋭い眼光を投げて寄こした。  忽ち、霊符の波が先ず最初に娘を飲み込み、次に茫然とするユウを飲み込んだ。 「のわあああああ───────────っ!!」  波は魔女の横を通過して、一気に扉を叩き開いた。  外気に当たると、螺旋を描きながら降下していき、真白い雪の絨毯の上に、二人を置いた。 「ニリクっ!!」  地上から、ユウは氷の城へ視線を上げた。  開いた門前にニリクが立っていて、その笑みは、安堵の色に染まっていた。  何かを喋っているが、遠くて聞こえない。 ────娘を頼んだ・・・。  その言葉を、唇だけで、ユウは読み取った。 「ニリク───────────────────っ!!」  ユウの声も虚しく、笑みを向けるニリクによって、氷の扉は閉じられた。  大声を張るユウの横で、雪の上にへたり込む娘は、全身を震わせた。 「父さま・・・・・・」  色違いの瞳はこれ以上なく縮小し、涙が絶え間なく流れ続けた。 「・・・いや・・・いやあああああああああああああああああああああああああああっ!!」  少女の甲高い悲鳴が、木霊した。 「父さま!!父さま!!いやあああああ───────っ!!」
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