小さな雛鳥と迷い猫

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 涙を振り撒きながら、娘は脳裏に焼き付いた父の顔に向かって、叫んだ。  ひとしきり喚いた後・・・僅かに残った最後の力で、漏らした。 「・・・・・・ひとりに・・・・・・しないで・・・・・・・・・・・・」  一人の少女の悲痛の願いが、重く響いた。  それを間近で拾い上げたユウは、奥歯を噛み締めた。 ────こわいよう・・・。  突然頭の中に横切ったのは、無力だった頃の自分の声。  暗い部屋の片隅で、縮こまって泣くしかなかったあの頃の自分と。 ────隣の娘とを、重ね合わせた。  フードの下で、銀色の瞳に光を宿した。  それと同時に、ユウは思いっきり、地面を蹴った。
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