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だけど今回みたいな、珍妙な依頼はこりごりだ。
大変な目に遭ったし。つうか巻き込まれたし。結果的に敵にハッパかけることになっちまった。
その件について、ユウはナペレとフローラから叱責を受けるのではないかと、恐々としていたが、不問になった。
今回の一件で『アイス・キャッスル』との溝が深堀されたという訳でもないらしいので、安心した。きっと、自分の知らないところで、フローラが色々動いてくれたおかげなんだろう。
これから先も頭が上がらないな。
そう、思考していた・・・・・・その時。
鳴ることの無いインターホンが、突然鳴った。
「ん?」
音に反応したユウは、すくっと起き上がって、リビングから玄関を覗いた。
ノガードかと一瞬思ったが、気配が違った。それに、合い鍵を渡してあるとはいえ、こんな夜遅くに連絡なしに突撃してくる人物でもない。
泥棒?いや、こんな山ん中に家が建っているなんて、誰も気付かない筈。
それに、直感的に、そういった類の輩ではなさそうだ。
もっとこう・・・・・・やけにきらきらしたっというか。凄い人柄の持ち主のような・・・・・・そんな感じの気配だ。
誰だろうか、と、ユウはそのままの格好で、扉を開いた。
開いた直後─────────ぴきっと、固まった。
扉の向こうで、にこにこっと光り輝く笑みを浮かべる、ニリクの顔があった。
「久しいな、ユウ・スウェンラ」
その流暢な声音は、どこか晴れ晴れとしたものが含まれていた。
「・・・・・・・・・・・・に、ニリク・・・・・・・・・?」
手紙の最後に、また会う日まで達者で。と残して消えた人物を前に、ユウは目を驚愕に見開いた。
次に、その隣に立つ、白いワンピースを着た綺麗な美少女と、その腕に抱えられていた大きなテディベア。
そして、二人の後ろに聳え立つ大量の箱の山とを確認して、顎をがっと開いた。
「失礼するぞ」
硬直するユウの横を、ニリクはさらっと通り過ぎて、中へと入り込んだ。
「これこれ、フェイル。家の中に入るときは靴はどうするのだ?」
「えと・・・・・・脱ぐ、です」
「そうだ。ほれ、おいで」
感情が先走って、靴を履いたまま中へ入って行った娘を優しく窘めて、自ら靴を脱がせてやるニリク。
遠慮なく中へと突き進んでいく後に、ユウはようやく我に返った。
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