小さな雛鳥と迷い猫

90/94
60人が本棚に入れています
本棚に追加
/182ページ
「が、ここで問題があるのは、そなたの身体・・・・・・そなたの身体には、『身体エネルギー』がほとんどと言っていい程残っておらん。恐らく、先天的な欠陥なのであろうな。これまでも、『能力』の過度の使用で、身体が動かなくなったりすることが、度々あったのだろう?それは『身体エネルギー』の欠陥による障害だ」  まるで、見てきたかのようにずばりと当てるニリクに、ユウは無意識に、咽喉を鳴らした。  ニリクは続けた。 「つまりどういうことかと言えば、『氣気』が常に栓の無い状態で只漏れになっているという意味だ。そのままの状態が続けば、身体が先に悲鳴を上げて、生命活動の危機に陥ることになるであろう」 「・・・・・・だ、だけど・・・・・・ずっと、三年間、Sランクを続けて来れたんだぞ?だったら、俺はどうして『能力』が使えるんだ?」  僅かに震えるユウに、ニリクは切れ長の瞳を向けながら、答えた。 「これは仮説に過ぎぬが・・・・・・恐らく、本来『身体エネルギー』が担う筈だった役目を、『氣気』が補っているのであろうな。無論、誰にでも出来る芸当では無い。それほど、そなたの『氣気』は常軌を逸しているということだ」 ────それに恐らく・・・それだけじゃない。  霊視の眼を研ぎ澄ませれば、ユウの身体の周りに漂うものがある。  善いものでもなければ悪いものでもない・・・・・・得体の知れない何か。  それが、ユウを守っているように、ニリクの目には映っていた。  その正体について、ニリクには思い当たる節がある。 ────もしかすると・・・・・・こやつの傍におれば、手がかりがつかめるやもしれん。  それらの声は、ニリクの中でのみ留められた。  その後、ニリクはまた、優雅な笑みへと表情を戻した。 「そこで。この私がそなたの手助けをしてやろう」  袖の下から檜扇を取り出して広げると、ぱたぱたと仰ぎながら、自慢げに言い放った。 「私の術を持って、遠隔でそなたの『氣気』の調整を執り行ってやろう。さもすれば、以前よりも激しい消耗を抑えられ、任務中に倒れることも少なくなるだろう・・・とは言っても、私が出来るのはあくまで手助け。後はそなたの自己責任。どうだ?私を置きたくなっただろう?」  そう区切りをつけた後、ユウはふっと口角を僅かに吊り上げると・・・・・・銀色の瞳に苛烈な炎を宿らせた。
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!