小さな雛鳥と迷い猫

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「ねえよ!!メリットなんて!!てめえの助けなんざ必要じゃねえんだよ!!そもそもなあ、いきなり消えておきながらいきなりやってきてうちに住ませてくださいって言われて、はいどうぞなんて簡単に言えると思ってんのか!?そもそもてめえとの縁はもうとっくの昔に切れてんだよ!!赤の他人だっつうの!!あとここを誰の家だと思ってるんだ!?この最恐かつ最悪の『銀眼の死神』様の家だぞ!!一般人がそう簡単に住める場所でもねえんだよ!!解ったらさっさと荷物を持って出ていけ──────────っ!!」  鬼気迫る形相で、言いたいことを全部吐き散らしたユウ。  ぎらぎらと、迫力満点に輝く銀色の瞳を前に、ニリクはふっと、小さく笑ったかと思いきや・・・・・・。  檜扇を広げて、突然なよなよと、床の上に倒れた。 「およよよよよ・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」  檜扇で顔を隠しながら、演技ぽい仕草で、泣き始めたニリクに、ユウは眉間に皺を寄せた。 「長年恵まれなかった子宝にようやく恵まれて、これからは親子水入らずで心穏やかに暮らせるやと思いきや、肝心の家が無くなっているではあるまいか。そもそもなあ、私は守れとは言ったが、壊せとは一言も言うてはおらぬのに、当の本人はそれは自分の責任では無いなんだと申しておる。ならば、これから先、私達親子にどう暮らしていけと申すというのか・・・・・・」  その声も演技じみていたが、その言葉はぐさぐさと、容赦なくユウの心を射抜いてきた。  およよよよ・・・と、未だ泣き真似をするニリクに、ユウはこめかみを、ぴくぴくと痙攣させた。 「渡る世は鬼ばかり・・・念願の再会を果たした親子にすらその牙を差し向けてくるとは、優しくはできておらんのか。何とも何とも、無情な世の中であるなあ。唯一、頼りにしていた相手には非難される羽目になるとは、いやはや残酷極まりない世の中だ・・・」 「・・・・・・非難ていうか、そもそもの発端はあんただろうが。俺は巻き込まれただけだっつうの。それを俺が壊したなんだのと、言われる筋合いはねえだろ」  事実を突き付けて、反論したユウであったが。  それは加速させる材料となっただけに過ぎなかった。
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