ことりのおはなし

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 二大大国大戦終結より、二月が経った頃。  東の大国ファイバランド国では、夏が終わり、木々には赤い紅葉や黄色の銀杏が色づいて、鮮やかな色彩で秋らしく靡いている。ひらひらと一片の紙のように揺れ落ちて、大地の上に二色の絨毯を敷いてある。どことなく吹く涼風が、夏の暑さを薙いで秋であることを主張しているようだ。  ファイバランド共和国は、中心都市の王都を中心に、東西南北の地域に分かれており、それぞれの地域を『四大貴族』が治めている。  その内、南地域は、『四大貴族』が一つ、リーバー家による管轄である。  リーバー家とはこれまた異色の一族であり、長たる主流は存在せず、数多く分岐している傍流によって構成されている。  その末端の末端の三分家・・・・・・ファイアクローシィズ家、ウォーターアーマー家、ブリーズ家の三つは、『リーバー三分家』と呼ばれており、末端でありながらも、最先端の立場で国家に尽くしてきた。その内のブリーズ家は、十二年前の悲劇により没落してしまい、現在は三兄妹だけが残っている。  さて。前述した三分家の内の一家、名門と知られているファイアクローシィズ家には、大戦直後に迎えられた養女がいた。  大戦後の調査で遠征に行った当主が、唐突に連れてきた親無し子・・・噂では、前当主が内縁の妻に産ませたまま、認知せずに放置していた子供だそうが、真偽は解らない。  身寄りもない、どこぞの生まれかも解らない怪しげなこの少女を、最初は快く受け入れられなかった家人達も、その少女の容姿や立ち振る舞いに感化され、不思議な魅力の虜となった。  その少女の名前はアサ。引き取られた後の名は、アサ・ファイアクローシィズ。  本家で静かに暮らしていたアサの元に・・・・・・本日、突然の客が、訪れた。
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