89人が本棚に入れています
本棚に追加
重い瞼をゆっくりと開く。
辺りが騒がしい。
白衣の人達が、急かされているかのように慌てふためき、部屋を出入りする。
頭がズキッと少し痛み、思わず顔をしかめた。
―――ここは一体…。どうしてベッドに横たわっているの?
口に装着された酸素マスクに違和感を覚えた。
まだ意識が朦朧とする私の傍に、誰かが駆け寄る。
「…舞優(マユウ)っ!?」
甲高い叫び声。
仰向けのまま、声のする方にゆっくりと顔を向ける。
半眼の為か、身を乗り出して私を覗き込む相手がぼやけていた。
「分かる…? 真尋(マヒロ)だよ…分かる?」
真尋と名乗った相手の声は高く、女の子だと分かった。
曇ったフィルターが外れて、真尋の容姿が浮き出す。
そこには、高めのツインテールをした栗色の髪の女の子。
かなり可愛い。
赤色のリボンタイが瞬間的に見えた。
恐らく高校生だろう。
「真尋」だと名乗った彼女への返答は一つしかない。
「……だれ……?」
それが私の発した初声だった。
最初のコメントを投稿しよう!