記憶ノ喪失

2/2
前へ
/181ページ
次へ
重い瞼をゆっくりと開く。 辺りが騒がしい。 白衣の人達が、急かされているかのように慌てふためき、部屋を出入りする。 頭がズキッと少し痛み、思わず顔をしかめた。 ―――ここは一体…。どうしてベッドに横たわっているの? 口に装着された酸素マスクに違和感を覚えた。 まだ意識が朦朧とする私の傍に、誰かが駆け寄る。 「…舞優(マユウ)っ!?」 甲高い叫び声。 仰向けのまま、声のする方にゆっくりと顔を向ける。 半眼の為か、身を乗り出して私を覗き込む相手がぼやけていた。 「分かる…? 真尋(マヒロ)だよ…分かる?」 真尋と名乗った相手の声は高く、女の子だと分かった。 曇ったフィルターが外れて、真尋の容姿が浮き出す。 そこには、高めのツインテールをした栗色の髪の女の子。 かなり可愛い。 赤色のリボンタイが瞬間的に見えた。 恐らく高校生だろう。 「真尋」だと名乗った彼女への返答は一つしかない。 「……だれ……?」 それが私の発した初声だった。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加