眠気

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[トントン]とドアを叩く音が部屋一面に響きわたり、編集者の田中太郎というありきたりな名前の彼が期待を膨らませドアノブに手をかけドアを開ける。♎「すまないね、まだ書き終えていないんだ。もうちょっと待ってくれるかい?」透き通るような声で頼む彼は常居 次人。今話題の売れっ子作家だ。世間には顔は知らされてはおらず、出版社もコロコロ変えて本を出しているため幻の人、とまで言われている。そんな幻の彼の出版を任されたのが田中太郎なのである。♊「はい。少し早めに来てしまったので全然大丈夫ですよ」♎「ありがとう、助かるよ」♊「いえ、私こそすみません。今、時の人になっている常居次人さんに会えるので早めに来てしまったんです」♎「そうですか、他の出版社の人もいつも必ず早く来てますんで、心配する必要はないですよ。後、一時間はかかってしまいそうです」
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