クローズド・サークル

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「内須川先生の専属編集者をしています、鶴見です。」   部屋の隅にいた小男がこちらを振り向く、明らかにカツラだ。しかも頭のサイズにあっていない。 「医者の猿渡だ。よろしく」  正面に座っていた太った男が手を挙げて挨拶する。 「猿渡先生は大学の同期でね。同じミステリ研究会だったんだよ。今でも趣味で執筆をなさっている。」  内須川が補足する。 「大学では一緒にミステリを書いていたが、今では一方は大先生、一方はしがない開業医だ。人間わからんもんだな。」  猿渡が豪快に笑う。  なるほど、今この別荘には内須川夫妻、犬芝刑事、編集者の鶴見、医者の猿渡、わたしの6人がいるわけだ。わたしは確認する。   「あと1人私の娘がいるよ。娘は気難しい性格でね。ほとんど人前に出ないんだよ。」  内須川が言う。  その時、突然玄関が開いた。  とたんに外気が入って部屋の温度が下がる。  突風とともに雪のつぶが部屋に入ってくる。外は吹雪のようだ。わたしは鶴見がすかさず頭を抑えるのを見逃さなかった。  部屋に異様な男が入ってくる。 「すいません、遅くなりました。名探偵の戸井暦玲です。」
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