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各地に残る楽園の伝承は数ある。
はるか上空の雲を突き抜けた所に天国がある。人が死を経てたどり着ける地の果てに人知を越えた世界があるなど。
旧約聖書の『創世記』に描かれた楽園といえばエデンの園があり、それはキリスト教徒にとっての楽園である。
神が人間に与えたその地に憧れを抱く者は多いだろう。
人にとって生きることは喜びと苦しみが同居する。いつかは平穏な時を見つけたいと願う。
未だに虚像の域を出ない神の存在を認めるより早く、人が自ら楽園と呼べる場所を探し当てたとなったらどうなるだろうか。
ある日、2人の小学生が運命的な出会いを果たした。
世間からは誘拐事件からの奇跡の生還と思われたが、両者の出身地が北海道と沖縄であったことから、世間では話題となったことがある。
帰宅しない子供を案じ、両親から捜索願いが出されて半日経った深夜零時。
2人の小学生は日本の中央都市にある大遊戯施設内のミラーハウスで、警備員の手により発見されたのだ。
話を聞けば2人は口々に今は亡き祖父に会ったと話していた。
一時は異世界の存在や神隠しの話でにぎわったが、それも5年という月日の中に埋没している。今はちょっとしたオカルトサークルで語られる程度だ。
だが、わずかな人々の胸の中には、その楽園の存在は生き続けている。
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