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今日とて、皆が友達と弁当を食っているこの昼休みでさえ、俺は屋上で暇を持て余している。
ああ、空が蒼い。
この空に飛んで消えてしまえたらどんなに良いだろうか。
あまりに暇だから、何気なくシャーペンを浮かしてみる。
やる度に、できなくなっていやしないかと期待してしまうのが、虚しい。
自分でもそんなことあり得ないって分かってるのにな。
諦めが悪いと自分でも思う。
「ねぇ、すごいね! 君がやってるの?」
突然上から声をかけられて、驚く。
集中が途切れて、シャーペンは床へと音を立てて落ちた。
ひ、人がいたのか!?
本来、屋上は立ち入り禁止だ。
まぁ、俺も能力でカギを開けて、勝手に入っているので人のことはとやかく言えないのだが。
そんなわけで、俺以外に人がいるわけがない。
慌てて上を見あげると、目の前の貯水タンクの上に、女の子が座っていた。
曇りのない、今日の空のような純粋な目をしている。
その子は、スタンッと軽快にタンクの上から降り立つと、満開の笑顔で俺に言った。
「ねぇねぇ!もっかいやってよ!」
その子は、俺の能力を手品か何かかと思っているようで、怖がっても、気持ち悪がってもいない。
それにちょっと安心して、そして少し躊躇した後、俺はもう一度シャーペンに意識を集中する。
ここでやらなければ何かあると公言しているようなものだ。
さっきと同じように、手から五センチくらい浮かせると、女の子は身を乗り出して、食い入るように見つめてきた。
長い間人と関わらない様にしてきたからか、気恥ずかしくなって、また集中が途切れてしまう。
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