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「すごいね!君、名前なんて言うの?」
女の子は、何の気兼ねもなく尋ねてくる。
どうやら、人と仲良くなるのが得意な少女のようだ。
相手の警戒心さえも簡単に解かしてしまう雰囲気を持っている。
そんな女の子をうらやましいなと思いながら、俺はぽそっと答えた。
「……相川日向。」
自分でも“無いかな”と思うほど、酷い返事になってしまった。
しかし、女の子はそれも気にせずに会話を続ける。
「日向君っていうんだ?私は、優香。南優香!」
ふわりと優しい笑みを浮かべて優香は俺を見上げる。
その笑顔がまぶしいなって思った。
というか、人と付き合うことを避けてきた俺にとって、優香は初めてまともに接する同年代の女子と言って良い。
どういう反応をすべきなのか分からない。
「南……さん?」
「優香でいいよ!日向くん一年でしょ?同い年だもん!」
とまどいながらもとりあえず名字を呼べば、すかさず訂正された。
まぁ、そっちの方が気楽でいいけども。
ちょっと気恥ずかしい。
「さっきのすごいね。私、あこがれるなー!」
曇りのない笑顔を浮かべて
そう褒めてくる優香を、直視できなくて俺は目をそらした。
どうして?
俺はこんな力なんて嫌いなのに。
そんな笑顔で褒められたら惨めになる。
「……俺は嫌いだよ。こんな特技なんて。誰も分かってくれない、こんな力なんて。」
今日初めて出会った女の子になに言ってんだろ。
自分が情けなくて嫌になる。
フェンスに身をもたれかけてズルズルと座り込んだ。
大きな空が目に入る。
「どうして?何かあるの?」
そのまま空を見上げていた日向の視界に優香の顔が映りこむ。
やっぱりその目がキレイだと思った。
どうしてかは分からない。
その目が印象的だったからだろうか。
話してみようかと思った。
どうせ、優香が一人で騒いだところでどうにかなるわけじゃないだろうし。
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