マフラー

2/2
前へ
/2ページ
次へ
ある、寒い日のことだった。 「ごーくーでーらぁ。」 突如、抱きついてきた山本に 獄寺は眉を寄せる。 「なんだよ、くっつくな!」 テクテクと道を歩いていたので 邪魔なことこの上ない。 「いーじゃん、寒いのな。  獄寺は温かいよな。」 「人で暖をとるんじゃねぇっ!」 見れば、山本はジャンバーこそ 着ているが他はマフラーさえも 身につけていなかった。 そりゃ、さみーわ。 今日は普段なら温暖な並盛に 珍しくとても寒い日だった。 「バカが、マフラーくらい  してこいよ。」 呆れたように言えば、 山本が口を尖らせる。 「こんなに寒いとは思わな  かったのな…。」 獄寺と言えば寒いのは苦手なので 完全防備である。 むしろ着すぎでモコモコだ。 「ったく、しょうがねぇな。」 うー、と引っ付いてくる山本に ため息を漏らし、獄寺は自分の していたマフラーを脱ぎ、 山本に押し付けた。 「それ、着てろ。」 「え、いいのか?」 マフラーを手に目を丸くした 山本を横目に獄寺は歩き出す。 「くっつかれて歩行の邪魔  されるよりましだ。」 歩いて体も暖まってきて、 少し暑かったのでちょうどいい。 山本は素直にマフラーをすると ニコニコと笑いだす。 「なんだよ、気持ち悪りぃな。」 「ハハッ、獄寺の匂いするなっ  て思って。」 「ばっ、ふざけんな!!変なこと  いうと貸さねぇぞっ!」 真っ赤になって山本に食って 掛かれば山本は笑いながら 両手をあげて降参した。 「わー、たんま!  もう言わないから貸して?」 「…勝手にしろっ。」 これ以上騒いでも山本には大して ダメージを与えれないとわかっていたので 獄寺はぶすっと黙り込んだ。 性格上こっちの方が不利なんだよな。 山本はどんなに獄寺が悪態を つこうともニコニコ笑って かわしてしまう。 「温かいのなー♪」 いつもよりニコニコ嬉しそうな 山本の笑顔にぶーたれていた 獄寺はすこし照れ臭くなって そっぽを向いたのだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加