71人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「は? 今から?」
やっぱりお誘いだ。
どこかに食事のお誘い? それとも家にお呼ばれとか?
まぁなんにせよ、土屋君が敬語を使ってないとこを見ると、電話の向こうの相手は土屋君のタメか年下よね。
だったら私みたいな年上で女力0の女より、全面的に女をアピールする若い女と一緒にいた方が楽しいに違いない。
それに、土屋君に決まった彼女が出来るチャンスかもしれないし。
あー……そうなったら今日の飲み会は私一人になっちゃうから、料理を注文するのは止めておこ。
品書きをテーブルの端っこに滑らせると、カルアの甘さに静かに浸った。
そうしていれば土屋君は電話を終えて、聞こえてきたのは深い深い溜め息。
先輩の前で溜め息吐くなんて失礼なっ。
「先輩。一人になると思って注文するの、止めましたね?」
「へ? あ、うん。今日はこれだけで十分だし?」
「はぁー……」
は?
何で私を見ながら溜め息吐くわけ?
あ!! もしかして!!
「何か食べたいやつあった!? 揚げ出し食べてから行くつもりだった!?」
土屋君は揚げ出し料理が大好き。
それゃあ、居酒屋来れば毎回頼む程に。
品書きを手繰り寄せて慌ててそれを土屋君の前に差し出せば、返ってくるのは苦い笑み。
「電話の相手。元カノ」
「へー、そうなんだ。定番のより戻そうって内容だったり? それで実は土屋君もまだ未練があったり?」
「はい。より戻そうって、言われました」
おお!
定番が実現しちゃったよ!!
最初のコメントを投稿しよう!