冬の理由

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「は? 今から?」 やっぱりお誘いだ。 どこかに食事のお誘い? それとも家にお呼ばれとか? まぁなんにせよ、土屋君が敬語を使ってないとこを見ると、電話の向こうの相手は土屋君のタメか年下よね。 だったら私みたいな年上で女力0の女より、全面的に女をアピールする若い女と一緒にいた方が楽しいに違いない。 それに、土屋君に決まった彼女が出来るチャンスかもしれないし。 あー……そうなったら今日の飲み会は私一人になっちゃうから、料理を注文するのは止めておこ。 品書きをテーブルの端っこに滑らせると、カルアの甘さに静かに浸った。 そうしていれば土屋君は電話を終えて、聞こえてきたのは深い深い溜め息。 先輩の前で溜め息吐くなんて失礼なっ。 「先輩。一人になると思って注文するの、止めましたね?」 「へ? あ、うん。今日はこれだけで十分だし?」 「はぁー……」 は? 何で私を見ながら溜め息吐くわけ? あ!! もしかして!! 「何か食べたいやつあった!? 揚げ出し食べてから行くつもりだった!?」 土屋君は揚げ出し料理が大好き。 それゃあ、居酒屋来れば毎回頼む程に。 品書きを手繰り寄せて慌ててそれを土屋君の前に差し出せば、返ってくるのは苦い笑み。 「電話の相手。元カノ」 「へー、そうなんだ。定番のより戻そうって内容だったり? それで実は土屋君もまだ未練があったり?」 「はい。より戻そうって、言われました」 おお! 定番が実現しちゃったよ!!
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