第1章

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 連中は、今夜も犠牲者となるはずの誰かを抱えていたのだろうか。  たくさんの黒い人影が固まって棺を抱え上げ、運ぶところを想像した。  運ばれている誰かが棺に入れられているかどうかは知らないが、きっと棺に入れられて運ばれているに違いないと、確信のようなものがあった。  棺の細かい部分を想像していると、いつの間にか僕の頭の中で、棺に入れられた人間が僕自身に変わっており、ゾッとして想像を頭から打ち消した。  明日のことに考えを向けてみる。  大人たちは昨日よりもその前よりも、そのずっと前よりも、きっと大騒ぎすることだろう。  テレビでもこの事件に関する特集番組がひとつ増えるかもしれない。  母さんのことを考えた。  母さんも、もう明日には「恐いわねぇ」じゃ済まさないかもしれない。  何せこの家には、僕の他にも子供が二人もいるのだから。  僕は布団を頭近くまで引っ張り上げ、今夜のところは安心して眠ることに決めた。  今夜の危険は去ったのだ。  そして、頭の回転を停止すると同時に瞼も閉じた。
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