第2章

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 次の日の朝早くに、救急車ともパトカーとも区別のつかないようなサイレンの音が、慌しく家の近くを通り過ぎていった。  その頭の中心まで響いてきそうな音で、僕の眠りは完全に醒めた。  どうやら今日は発見が早かったらしい。起き上がりながら、そう思った。  階下に下りていくと、落ち着かない様子で母さんがキッチンを歩き回っていた。  そして、起きてきた僕を見ると一旦立ち止まり、「おはよう、早かったのね」と言いつつ笑みを向けた。  ごく自然な笑顔を作ったつもりだろうが、その顔は不安しか映してはいない。  母さんのその言葉で僕は、今日が日曜日だったことをようやく思い出した。  僕がおはようと返事を返すと、それと同時に母さんは、居間の方に決意を込めたふうに歩いていった。  そこには父さんが、陶器の置物のように座っていた。  父さんしかいないところを見ると、勇太と美夜はまだ眠っているらしい。  勇太と美夜は僕の弟と妹である。勇太は僕より三つ年下、美夜は五つ年下である。  二人ともおとなしく従順で、まだ僕に反抗することを知らない。  特に一番下の美夜は、お兄ちゃんお兄ちゃんと言いつつ後ろをついてきて、鬱陶しいくらいだ。  それにしても父さんが日曜日に家にいるなんて、非常に珍しいことだ。  明日は傘が降ってもおかしくない。
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