482人が本棚に入れています
本棚に追加
コーヒーも飲み終わり、手持ちぶさたになった片手で、もふもふと頭を撫でながら、楓が録画していたバラエティー番組をぼんやりと眺めていると、ふと左腕の重さが増し、隣に目線を移すと熊に顔を埋めたままの楓が、完全に体を凭れさせてきた。
「楓?」
呼び掛けても返事はなく、変わりに小さな寝息が聞こえてくる。
テレビのボリュームを下げ、ゆっくりと上下する肩を眺めながらこのまま寝かせておくか、起こして部屋に帰らせるか思案する。
「楓」
「んー…ゃあ…」
軽く頬を摘まんで起こそうとしても、ふるふると首を振って更に顔を熊に埋める。
そっとソファから立ち上がり、そのまま横に寝かせ抱えた熊を取り上げると、代わりのものを求めて伸ばした腕が俺に抱き付いてきた。
「おい、楓」
「んー…」
「楓」
寝ているくせにやけに強い腕の力のせいで中腰の状態で身動きが取れず、諦めてその場に膝をつく。
「てめえこの俺に膝をつかせるとはいい度胸だ」
「ぃー…」
むにぃ
気持ち良さそうに眠る楓の頬を摘まみ、よく伸びる頬を思いっきり伸ばしてやると痛そうに眉間にシワが寄り少しだけ溜飲が下がる。
「しかし、よく伸びんな」
「ぷー…」
「………」
摘まんだ手を離し、少しだけ赤くなった頬を指先で撫でると口元が緩んだ。
「…」
ふにふにと赤い唇を指で押し、息を止めて、そこに唇で触れてみた。
最初のコメントを投稿しよう!